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3)社会階層別出生率の差異
社会階層別の理想子供数の差は、直接各階層別出生率に反映されている。例えば、1966年当時小学校卒業程度の女子の合計特殊出生率は4.6であったが、専門学校以上程度の女子のそれは2.5と、約1対0.54の比例を示した。それが1992年に至っても、両者の合計特殊出生率はそれぞれ2.8と1.2で、約1対0.43の比例となり、あまり変わっていない。実際において、社会階層別出生率の差異を減らすことが、家族計画推進の目的の一つで、「逆淘汰」助長のそしりを免れるよう努力したが、結果は予想とかけ離れている。この差が依然として存在する理由としては、(1)高等教育女子の就業率が高く、比較的晩婚であるため、出生率が低くなった、(2)高等教育の女子は比較的忙しく、多くの子供を産みたがらない、(3)高等教育の女子は避妊の知識が豊富で、失敗率が低いため「超過出産数」が少ない、等が挙げられる。
事実上、家族計画の推進は非常に下層階級の民衆を重視し、努力している。表1−2に示すように、避妊経験のある女子の占める割合は、1965年には階層別に非常に大きな差を示したが(19%対60%)、1976年には、階層別の差異がほとんどなくなり、各階層の女子は同等に出生率をコントロール出来ることを示す。このことから、階層別出生率の差は、大部分が理想とする子供数の差によるものと言える。だが、なぜ階層別の理想子供数の差が依然として存在するかについて、様々な観念や態度の差等が挙げられるが、詳細についての議論は別の機会に譲りたい。ここでは特にいわゆる「逆淘汰」について一言いっておきたい。というのは、この「逆淘汰」説は、台湾ではあまり成立しないのではないかと思うからだ。なぜならば、台湾の一般的生活水準はある程度高く(平均国民所得は約12,000USドル)、貧富の差も小さく、いわゆる下層階級でも生活には余り困らないし、その合計特殊出生率もわずか2.8(1992年)で、子供の養育は問題にならない。それゆえ、下層階級の子供たちの質が特に劣るとは思えない。ここでかえって気になるのは、高等学校以上の教育を受けた女子の合計特殊出生率が、わずか1.4と置き換え水準をはるかに下回り、将来人口の減少をきたすことである。
4)理想の子供数と実際出産数
一般に女子の合計特殊出生率はすでに「換き換え水準」以下に下が

 

 

 

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